第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「あとコレ、私の携帯の番号」
「おぉーい! 条例違反!」
小さな紙を五条に握らせる女教師に、生徒たちから大ブーイングが巻き起こる。
「るせー! 教職の出会いのなさ ナメんじゃないわよ!」
「それは私たちだって同じでしょ⁉︎ 教師が年下趣味とか見損なったわ!」
「はぁ⁉︎ 光源氏ディスってんの⁉︎」
ギャアギャアと互いに罵り合う教師と生徒に、星也は何も言えず呆気に取られた。そんな中で、五条がもらった携帯番号の紙を懐にしまう。
「五条さん、それ取っておくんですか?」
「お兄ちゃん、だろ? 可愛く呼べよ」
ウザ。こんな奴が兄など絶対イヤだ。
前髪の男の方が常識がある分まだマシである。
「ほら、行くぞ!」
「ちょ、ちょっと! 待っ……っ!」
教師と生徒たちが騒いでいる間に、五条が理子の腕を引っ張った。
「理子さま、緊急事態です。ついて来て下さい」
「……星也が言うなら……」
「なんで俺じゃ信用できないの?」
それは日頃の行いだろう。
今日 初めて会ったばかりだけど。
五条は窓を開き、そこから宙へ向けて駆けていく。
「【謹請現示──白虎】」
式神の【白虎】を召喚し、星也はその柔らかな背中に乗った。そして、宙から屋根に降り、そのまま駆けていく五条の背中を追う。
「どこへ連れて行く気じゃ!」
「高専だよ」
「理子さま。呪詛師が来ています」
五条に補足する形で伝えると、理子はグッと黙った。
「友だちが巻き込まれんのはイヤだろ。だったら大人しくしてろ」
本当ならギリギリまで好きに過ごさせてやりたかったが……こうなってしまっては仕方がない。守るのにも限界がある。
友だちと過ごせなくなった分、自分が彼女のためにできることがあればいいのだが。
「ふふっ。あらあら、可愛い坊やがいるじゃない♡」
学校を出てすぐ、一人の女が道を塞いでいた。
ジャケットにタイトなミニスカートの黒いスーツを着たグラマラスな女は、真っ赤な唇に指を当て、こちらを見ている。