第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「そうか。それで、理子ちゃんは?」
「五条様、星也様と一緒に学校を出るのを見ました」
「じゃあ、私たちも向かいましょう。少し面倒なことになってる」
言いながら、夏油は携帯を取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。同時に、地面に伏せていた紙袋の男が「ククッ」と笑い声を上げる。
「やっぱ、さっきのが三〇〇〇万か」
どろどろと輪郭が溶け、ドプンッと姿が消えた。
「式神⁉︎」
「いえ、たぶん違います。なんだろ、これ……」
目を瞠る黒井に、星良が首を傾げる。
「悟か。実は、理子ちゃんに三〇〇〇万の懸賞金が掛かっているらしい」
『天内の首に懸賞金?』
「あぁ」
通話の音声を最大にし、黒井や星良にも聞こえるようにしてくれる。
「呪詛師御用達の闇サイトで期限つき。明後日の午前十一時までだそうだ」
なるほどね、と言って、五条は電話を切った。
「切れちゃった」
「たぶん、襲撃を受けたんだ」
黒井は「急ぎましょう」と二人を促し、校門へと向かった。
「悟……」
「夏油さん、あっちです」
星良が五条の駆けていた方を示す。
――【駿足】
星良はスカートの裾を少しめくり、墨で足に字を書きつけた。
「身体強化は負担が強いのでは?」
「自分の加減は分かりますから」
自分一人だけ何もできない悔しさが募る。
もっと力があれば……いや、理子を守れるのならなんだっていい。
「万が一ということがあります。お二人の方が早い。先にお嬢様のところへ!」
「分かりました。行けるかい、星良ちゃん」
はい、と頷く星良が夏油の後を追う。その後ろ姿を見送りながら、震える拳を握った。
不意に、背後に気配を感じて振り返る。だが、それより早く衝撃が走り、黒井は意識を手放した。
* * *