第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「五条様、星也様。そこの扉を出てまっすぐ進んだら礼拝堂です!」
廊下を走りながら眼前の扉を示すと、五条が「リョーカイ」と走るスピードを上げた。
去って行く五条と星也の背中を見送り、黒井は星良を連れて階段を駆け上がる。
「お嬢様!」
音楽室を開けて中へ飛び込む――が、無人。
「誰もいない……ということは、礼拝堂が正解だったみたいですね」
星也なら問題ないかな、と星良が窓の外を見る。それにつられ、黒井も窓から礼拝堂へ視線をやった。
不意に視線を下げると、校舎の外に誰かがいるのを見つける。
「星良様、あれを」
「……誰……侵入者?」
紙袋を被った――体格からして男だ。
「行きましょう」
音楽室のロッカーからモップを取り出して促すと、星良も静かに頷いてくれた。揃って音楽室を飛び出し、紙袋の男の元へと向かう。
「黒井さん、そのモップ貸して下さい」
「分かりました」
モップを渡すと、星良は一度 立ち止まり、腰につけた筆と墨でモップに何かを書きつける。
――【堅牢】、【勇猛】
丁寧で大胆な筆跡だ。
「ありがとうございます」
「いえいえ。急ぎましょう」
やがて外へ出て、紙袋の男を見つける。男は屋根を駆ける人影を見ていた。おそらく、五条たちが理子を連れ出したのだろう。
「……【盤星教】の方でしょうか? 【Q】の人たちは、もっと変な格好をしていますもんね」
「この人も、充分 変な格好だと思いますよ」
星良の言葉に、まぁ確かに、と内心で同意する。
振り返った紙袋の男――右目には×、左目は○の形に穴が空いていた。服装はTシャツにパンツとラフな格好。
Tシャツの上からでも分かる筋肉を見るに、おそらく接近戦も得意としているだろう。