第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「殺(と)った‼︎」
勝利を確信して笑う老人――の腕を掴み、短刀を手放させ、首を曲げる。さらにたたみかけるように、容赦なく顎を殴る。
そうだ。情報を引き出さないといけないから、殺さないように加減をしなければ。
顔が歪みに歪み、血だらけになった老人が力なくその場に崩れ落ちる。
「誘っだな……⁉︎」
ひしゃげた声で恨めしそうに言う老人に、夏油は「まぁね」と得意げに頷いた。
「アンタ、ずっと 近づきたくてウズウズしてたろ。勝ち方が決まっている奴は、勝ち筋を作ると乗ってくる」
そんなことより、と気絶しそうな老人の胸倉を掴んで強く揺さぶる。
こちらには聞きたいことがあるのだ。気絶するなら後にしてくれ。
「アンタ、【Q】? それとも【盤星教】?」
「……なんの、話だ?」
すっとぼけてシラを切ろうとしている……わけではなさそうだな。
「仲間は何人いる? 三人で入ってきただろ?」
「仲間なんておらん! 本当だ!」
ビクビクと震える老人に、嫌な予感が募る。
何が起きているんだ?
「そうか。なら、質問を変えよう。オマエ、何でここに来た?」
ガッと肩に蹴りを入れると、老人は痛みに呻き声をあげた。
「言う! 言うから、それ以上はやめてくれ‼」
そう叫ぶと、老人は壁に背を預け、大きく息を吐いた。
「……天内 理子という小娘を殺せば三〇〇〇万支払うと、匿名の書き込みがあったんじゃ」
呪詛師が使う闇サイトに投稿された、一つの依頼。顔写真、学校名の記載もあったらしい。
期限は残り四十七時間――明後日の午前十一時。
「生死は問わず。三人来たと言っておったな。おそらく残りの二人もそのサイトを見て来た呪詛師じゃろうて」
ヒヒッとニヤニヤとする老人がムカついて、夏油は頭を思いっきり殴りつける。
「はぁ……厄介なことになったな」
サイトを見た呪詛師が、ぞくぞくと理子の命を狙いにやってくるということか。
完全に意識を手放した老人を冷ややかな目で見下ろし、礼拝堂の方へと目をやった。
* * *