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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】


 星良と自動車に乗り込み、火葬場へ向かう。
 道中の会話は一切ないのに、不思議と居心地の悪さは感じなかった。

 こちらも心の整理がつかず、何か話したい気分ではない。
 星良の方も、何かを聞いてくることもなければ、これからのことを説明する素振りもない。
 そんな星良の気遣いに、虎杖はただただ甘えた。

 祖父の葬式は開かなかった。
 開く時間がなかったというのもあるが、祖父は短気で頑固者で、虎杖以外に見舞客も来なかった。
 葬式を開こうにも、交友関係が全くと言っていいほどなかったのだ。


 気がつけば、あっという間に時間は過ぎていた。虎杖はベンチに座り、火葬場の煙突から立ち昇る煙を眺める。
 ゆったりと流れる時間の中で、身内を亡くした虚無感が少しずつ追いついてくるような気がした。

 左隣に座る星良は、やはり何も言わずにただ寄り添ってくれている。今日初めて会ったばかりなのに、その存在があまり気にならない。


 やがて、コツコツと五条が歩いてきて、虎杖を挟む形でベンチに腰を下ろした。

「――亡くなったのは?」

「爺ちゃん。でも、親みたいなもんかな」

「そっか。すまないね、そんなときに」

 申し訳なさそうに言う五条に、星良が反対側から「ホントですよ」と唇を尖らせる。

「もう少し空気を読んだらどうなんですか? お爺さんを亡くしたばかりの少年に追い討ちをかけるみたいにして」

「いや、本当に申し訳ないって思ってるって!」

「反省して下さいよ。身内を亡くすって、精神的にかなり大ダメージなんですから!」

 星良の気迫に、「あぁ、この人も身内を亡くした経験があるんだな」と察した。

 自分のために一生懸命に怒ってくれる星良が嬉しくて、「大丈夫っスよ」と、虎杖は声を掛ける。

 しかし、本気で五条に腹を立てているわけではないようで、星良は頬を膨らませてあからさまに「不機嫌です」と主張していた。
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