第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「僕たちには――……世界を守る義務がある」
「天内の義務じゃねぇだろうが」
まるで自分に言い聞かせるようにして吐き出された星也の言葉を、五条は平然と切り捨てた。
黒井がオロオロとする中で、爆弾を投下した本人である夏油は楽しそうに、星良もにこやかに静観している。
「テメェが弱ぇからってビビッてんのか? 一緒にすんじゃねぇよ」
――俺たちは最強だからな!
きっぱりと宣言する五条に夏油は嬉しそうに口角を上げていた。
一方で、星也はあまりの暴論に絶句する。
「正気じゃない……あなた、御三家の人間ですよね?」
「だったら何だよ、クソガキ。『同化がイヤだ』って言う【星漿体】が大好きな姉貴だったとしても、助けたら反逆だからって泣きながら説得すんのか、シスコン」
今まで無表情だった星也が、グッと眉根を寄せて五条を睨みつけた。
「結局 テメェにとって天内の同化は、どこまでも他人事ってわけだよ。良い子ちゃんしてれば周りが褒めてくれるもんな? 気分いいだろ」
さんざん挑発してやれば、星也は俯いてギリッと奥歯を噛み締める。よく見れば、拳も震えていた。
助けたいが、許されない立場。理性で本音を隠すのは上手いが、無表情の裏に本音が見え隠れしている。
さすが、御三家に次ぐ元・名門の出身。ご立派な使命感だ。
やがて星也は顔を上げ、夜色の瞳を吊り上げて睨みつけてきた。
「僕、あなたが嫌いだ……っ!」
「奇遇だな。俺もお前みたいなガキは嫌いだよ」
返す言葉もなくて逆ギレ。どんなに大人ぶってもガキはガキだ。
「星也、そこまで。ヒートアップしすぎよ」
星良が頭をポンポンと撫でると、星也は姉の肩口に顔を押しつけながら抱きついた。
「こんな風に言ってますけど、星也も星也なりに、理子さまをどうにか助けられないか考えてたんですよ。夜蛾さんに話を聞いたり、天元さまについて調べたり……」
結局どうにもできなくて、何日も何日もかけて、これが自分の使命だと無理やり納得した。
「ごちゃごちゃ考えるから詰まるんだよ」
そうですね、と星良は優しく弟の頭を撫でて微笑む。