第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「黒井さん。あたしも星也も、理子さまと知り合って三ヶ月です。過ごした時間は長くないけど、あたしたちは理子さまのことが好き。だから、最後は泣かないって決めてます」
二度と会うことができないのなら、最後に見るのは笑顔がいいに決まっている。
「もう、あと二日しかありません。泣くなら今のうちですよ」
「……そうですね」
ふわりと星良が微笑むと、黒井の頬を一筋の涙が伝った。
「けど、実際問題、理子ちゃんが直前で同化を拒む可能性もあるんじゃない?」
夏油の爆弾発言に、全員の視線が集まる。
「受け入れているように思えましたけど」
「そうだね。だが、何度も自分に言い聞かせ、納得させてきただけということもありえる」
重いはずだよ。自分が自分でなくなることを受け入れるのは。十四歳の女の子ではなくても。
星也にそう言って、夏油は五条へ視線を移した。
「ンなもん決まってんだろ。そんときは同化はなし!」
「勝手に決めないで下さい」
星也の夜色の瞳が静かな瞬く。
「天元さまが【星漿体】と同化しなければどうなるか、知らないわけじゃないですよね。呪術界への影響が一般社会にまで及ぶ。説得するのが筋なんじゃないですか」
星也の意見に「バカか」と五条は鼻で嗤った。
「頭ン中に正論と常識詰め込んでイキってんじゃねぇよ。呪術界のアレコレなんて、天内の知ったことか。世のため人のために死ねって言われて、『はい、そうですか』って死ぬヤツの方がイカれてんだ」
「死ぬんじゃなくて『同化』です。助けられるなら助けたいに決まってる。でも、それをやってしまったら反逆だ」
天元だけではない。呪術界全てを敵に回すことになる。