第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
「それが星也のいいところであり、悪いところなんです」
全部を丸く収めようとして、自分で道を塞いでしまう。簡単に解決できることも、自分以外の人間が不利益を被らないようにと気を遣い、結果 事態を悪化させてしまうこともあったらしい。
「不器用な弟だから、お姉ちゃんとしては心配なんです。五条さんの影響でもう少し大胆になれたらちょうどいいかも」
「絶対イヤだ」
「それはこっちの台詞だ、バカ」
二人のやりとりに、夏油が小さく声を立てて笑う。
「悟、あんまりからかっちゃだめだよ。子どもなんだから加減しないと」
「……この前髪も嫌いだ」
ナチュラルに煽る夏油へ、星也の一言が突き刺さった。大爆笑する五条に、夏油の笑顔が引きつる。
「……こんな星也様は初めて見ました」
目を丸くする黒井に、「大人ぶってカッコつけてんだろ」と五条は返し、夏油を呼んだ。
「傑、監視に出してる呪霊は?」
尋ねれば、「問題ない」と彼は校舎を見上げる。
近くでの護衛を拒まれたため、夏油の呪霊を校舎内に放ち、監視させているのだ。呪霊たちなら一般人には見えない。
冥冥のように視覚共有があれば便利なのだが、それでも、異常があればすぐに分かる。
「おい、星也。お前もしっかり見張れよ」
星也の式神には、校舎の外を見張らせている。こちらも式神との感覚の共有はないが、離れていても意思の疎通が可能らしい。
「言われなくてもやってま――……」
ハッと彼方へ厳しい視線を向けた。
「どうしたの、星也?」
「侵入者が……三人です」
すると、夏油も固い声音で「悟」と呼び、肩に触れる。
「急いで理子ちゃんのところへ――三体祓われた」
全員が息を呑み、緊張が走った。
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