第36章 リゾルートに揺るがぬ決意【壊玉】
――廉直女学院 中等部
理子を学校に送り、五条たちは敷地内にある無人のプールで待機していた。今日はプールの授業もなく、ここが一番 目立たないとのことだ。
その間に夜蛾へ連絡をしたが、星也の言う通り、『天内 理子の要望には全て応えよ』と天元から命令されていると知らされる。
せめて星也や星良を任務から外すように伝えたものの、こちらも『理子が望むから』と却下された。
電話を切り、五条は舌打ちをする。
「夜蛾さん、なんて言ってました?」
「その顔を見る限り、星也君の言った通りだったのかな?」
星良と夏油に、五条は不機嫌さを隠すことなく顔を顰めた。
「理子さまは同化後、天元さまとして高専最下層で結界の基盤となります。憂いがないよう、できる限り好きにさせましょう。それが僕たちの任務です」
「そうだね。友人、家族、大切な人たちともう会えなくなってしまうんだ」
星也の言葉に、夏油が頷いた。
「理子様にご家族はおりません」
黒井が鎮痛な面持ちで語る。
幼い頃に事故で両親を亡くし、それ以来、黒井が世話をしてきたらしい。だから、せめて友人との時間は少しでも多く取らせてやりたいと。
「それじゃあ、あなたが家族だ」
切々と訴える黒井を見て、夏油が微笑を浮かべた。それに黒井が「はい」と目尻に涙を滲ませる。
理子を送り出すことを一番 辛く感じているのは彼女だろう。
理子自身が天元との同化をどう捉えていようと、黒井が同じように感じているとは限らない。
それでも、理子に拒む意思がないのなら、無理やりにでも受け入れるしかない。