第35章 過ぎ去りし青春のリコルダンツァ【壊玉】
「下衆め! 妾を殺したくば、先に星也たちを倒してみせよ! 星也、星良、やってやれ‼」
――【星漿体】天内 理子
「無理ですよ、理子さま。僕たちよりずっと格上の相手です」
「何を言っておるか、星也! そなたは三級とはいえ、すでに二級の審査中であろうが。謙遜することはない!」
少女――理子の言葉に、夏油が「ほぅ」と驚きに目を見開き、五条もさすがに「へぇ」という声が出た。まぁ、こっちは一級だけど。
「二級か。すごいな。いくつ?」
「八歳です。すごいんですよ、あたしの弟は!」
胸を張る理子と同じ表情で、星良もドヤ顔をである。だが、当の本人は照れた様子もなければ、誇らしげでもない。
「姉さんも理子さまも、大げさに騒ぎすぎです。まだ審査中で二級じゃありませんし。それに、等級なんて、大事の前じゃ些事でしょ。三級だろうが二級だろうが、一級だろうが特級だろうが。負けるときは負けるし、死ぬときは死ぬ。結局 何も変わらない」
チッ、と思わず舌打ちが出てくる。
「陰気臭ぇガキだな。ビビってんなら、家に帰って算数でもやってろよ」
「事実を言っているだけです。まぁ、【無下限呪術】に【六眼】なんて強カードを生まれつき持っているあなたには、縁遠い話かもしれませんが」
「知ってんのか。俺のこと」
「この業界にいたら、名前くらい聞きますよ。そうでなくても、一門の偉い人たちから散々 聞かされていましたから」
自分と星也の間で、バチバチッと火花が爆ぜた気がした。
コイツ、とことん合わないタイプだな。
「はいはい。皆 無事でよかったねってことで! 星也もいつまでも拗ねないの」
星良が頭を撫でると、星也のピリついた空気が緩む。なんだコイツ。シスコンか。