第35章 過ぎ去りし青春のリコルダンツァ【壊玉】
「まぁまぁ。いいじゃないですか、その話は」
言いたくない、ってわけね。
弟は黙して隠し、姉は笑顔で隠す。対照的だな。
【神ノ原の惨劇】──その真相を、御三家や上層部は知っている。
彼らの姉妹、その姉が特級呪霊に成り、双子の妹に取り憑いた。そして、現在 秘匿死刑待ち。
確か、姉弟の父親が夜蛾と知り合いという伝手で、彼が上層部に掛け合い、執行を保留にしていると聞いている。
だが、力が強すぎるため、それも時間の問題。
何かを得るには何かを差し出さなければならない。これは“縛り”に限った話ではない。
努力をして力を得て、痛みを経て強さを手にするのと同じ理屈。
双子が凶兆なのは、一卵性の双子の場合、DNAと同じで呪術でも同一人物とみなされ、そういった利害が成立しないからだ。
それに、一つのものを二つに分ければ、当然 過不足が出てくる。
たとえば術式や呪力──事実、禪院家に生まれた双子の姉妹は、妹はかろうじて呪力を持っているが、姉は呪霊すら視認できないほぼ一般人。
コイツらは二卵性の双子か。だから、凶兆の対象とならなかったのだろう。
それでも、二卵性とはいえ、ここまで濁りがないのも珍しい。
五条の視線に居心地の悪さを感じたのか。星也が五条から視線を逸らす。
「ん……」
身じろぎをする気配を感じて、五条たちの視線が【星漿体】の少女に集まった。
「あ、起きた」
しゃがんで顔を覗き込めば、少女の小さな手の平が五条の頬を打つ。