第35章 過ぎ去りし青春のリコルダンツァ【壊玉】
「なに、このガキ共。つーか、ガキのお守りって一人じゃねぇのかよ」
どういうわけか、合流した夏油は、【星漿体】の女子中学生とメイド服の女性、さらに妙な小学生の姉弟と一緒だった。
その【星漿体】とメイド服の女性は、いまだにソファで気絶している。
「改めて。私は夏油 傑、こっちが五条 悟」
ジロジロと少年少女を見ている間に、夏油が自己紹介をやってくれた。
「悟。二人が先に【星漿体】の護衛をやっていた術師だよ」
「術師ィ? このガキ共が? はぁ〜〜……ガキんちょのお守りだけでもダルいのに、追加で二人も見んのかよ。やる気出ねぇって!」
「悟」
嗜めるように夏油に名前を呼ばれ、五条は「はいはい」と両手を上げた。
まぁ正直、口で言ったこと全て本心というわけではない。
五条には【六眼】で相手の呪力が見える。
少女の方は四級術師としてそこそこだが、少年の呪力は底が知れない。単純に呪力が多いという話ではない。おそらく、術式と紐づいた結果か。
呪力が多いとか、珍しい術式が使えるという理由だけで戦闘力は測れない。それでも、【星漿体】を守っていた主力はこの少年で間違いないだろう。
「で、オマエら。名前は?」
「神ノ原 星也」
「姉の神ノ原 星良です。よろしくお願いします」
神ノ原ね、と五条は繰り返す。
──御三家に次ぐ権力を誇っていた神ノ原一門。
秘密主義な一族だ。そのくせ、今か今かと御三家の座を狙いっていた。
一門に二組の双子がいたことは知っていたが、実際に会うのは初めてだった。
「神ノ原っていうと、少し前に惨劇があった……?」
夏油の言葉に、相変わらず表情を変えることなく、少年──星也が「えぇ」と簡素な返事をした。
「去年の十二月、特級呪霊に一族門下生皆殺しにされた、“あの”神ノ原一門です。実際は三名 生き残っていますが」
「三名……残りの一人は?」
夏油の問いかけに、星也は答えない。
代わりに姉の星良は一際 にっこりと笑みを浮かべ、パチンと両手を鳴らす。