第35章 過ぎ去りし青春のリコルダンツァ【壊玉】
今後はこの姉弟と連携して【星漿体】の護衛。
となると、自己紹介といきたいところだが、何度もさせるより、現状報告も含め、五条も交えてまとめてやった方がいいだろう。
「ごめん! マジごめん! この件から手を引く!」
『チューしよーよ……ねぇ、チュー』
コクーンの言葉に耳を貸すことなく、夏油はスライド式の携帯で、五条に連絡をしていた。
星良の先ほどの発言から、襲撃者が二人なのは分かっている。ここにいないということは、もう一人は五条のところにいるのだろう。
この騒ぎの中でも、【星漿体】の少女もメイド服の女性も起きる気配なし。
星也は何を考えているのか分からないが、星良はコクーンを気の毒そうに見ている。
「分かった、呪詛師も辞める! もちろん、【Q】もだ! そうだ! 田舎に帰って米を作ろう!」
すると、夏油は携帯から顔を上げ、耳に手をかざした。
「聞こえてるだろ!」
「呪詛師に農家が務まるかよ」
「聞こえてんじゃん! 学生風情が舐めやがって……!」
怒りに我を忘れて防御姿勢を解いたコクーンの首や顔を呪霊が舐め回す。
「だがな! ここにはバイエルさんが来ている! 【Q】の最高戦力だ! オマエらもそいつらも──」
夏油や星也たち、【星漿体】を指さすコクーンに、夏油は「ねぇ」と言葉を遮り、携帯の画面を見せた。
「バイエルってこの人?」
「え?」
そこには、ボコボコにされて気絶している男と、笑顔でピースサインをする五条の姿が写っている。
「……はい、この人ですね」
驚きに目を見開くも、一周回って冷静になったコクーンが敬語で頷いた。
【Q】──最高戦力であるバイエルの離脱(リタイヤ)から組織瓦解。
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