第35章 過ぎ去りし青春のリコルダンツァ【壊玉】
「お?」
ゴォォォッと煙はどんどん激しく勢いを増す。
「これでガキんちょが死んでたら俺らのせい?」
まだ現着していないということで、見逃してもらえないだろうか。
そんなことを考えている間に、夏油が【呪霊操術】でマンタのような呪霊を呼び出し、空へ飛び立つ。
それを見送ると、ほどなくして別の人物がビルから飛び降りてきた。そして、夏油より早く、落ちてきた人物を受け止める。
「いやぁ、セーフ セーフ」
このまま解散ということにならなくてよかった。
まだ顔も知らないが、【星漿体】が死んで任務終了は、あまりに後味が悪い。
そこへ、人差し指と中指を揃えて立て、掌印を結ぶ。迫ってきたいくつものナイフが、不自然に制止した。
「素晴らしい」
──【Q】戦闘要員 バイエル
拍手の音に振り向けば、黒いマスクをつけ、白い軍服を着た長髪の男が手を鳴らしながらやって来る。
「君、五条 悟だろ。有名人だ。強いんだってね。噂が本当か確かめさせてくれよ」
「いいけど」
止めたナイフをガチャガチャと術式で引き寄せながら、五条はバイエルへ静かな視線を向けた。
「じゃ、ルールを決めよう」
「ルール?」
「やり過ぎて怒られたくないからね」
今朝 夜蛾に怒られたばかりだし。
「泣いて謝れば殺さないでやるよ。これがルールね」
軽く煽ってやると、バイエルは「クソガキが」と早々に挑発に乗ってきたのだった。
* * *