• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第35章 過ぎ去りし青春のリコルダンツァ【壊玉】


「そもそもさぁ、【帳】って必要?」

 夜蛾の説教と鉄拳によってできた たんこぶ にイライラを隠すことなく、五条は教室の机で頬杖をついて拗ねていた。

「別にパンピー(一般人)に見られてもよくねぇ?」

 どうせ、彼らには呪霊も呪術も見えないのだ。ならば、わざわざ隠す必要もないだろう。面倒くさい。

 だが、夏油が「駄目に決まってるだろ」と真面目な顔で反論してきた。彼の隣では、家入が五条のサングラスをかけて遊んでいる。

「呪霊の発生を抑制するのは、何より人々の心の平穏だ」

 そのために、目に見えない脅威は極力 秘匿しなければならない。

 目に見えない恐怖、それが理屈で起きるものでも、自然災害でも、我々の領分だったとしても、全てが呪霊発生のきっかけになる。

 そう続ける夏油を、五条は「分かった 分かった」とうんざりした声で止め、家入に「返せよ」とサングラスを取り返してかける。

「弱い奴らに気を遣うのは疲れるよ、ホント」

「『弱者生存』──それがあるべき社会の姿さ。弱きを助け、強きを挫く」

 ──いいかい、悟。

 そう言って、夏油は静かにこちらを見据えてくる。

「呪術は非術師を守るためにある」

 曇りなき眼、淀みのない口調で夏油がきっぱりと言いきった。

「それ、正論?」

 ふっと笑い、五条は挑発するように口角を上げる。

「俺、正論 嫌いなんだよね」

 何、と低い声で夏油が目をすがめた。そんな自分たちの様子に何かを察知したのか。家入がぴゅーっと教室を出て行く。
/ 857ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp