第34章 皆と過ごすディヴェルティメントな日々
「はぁ……吉野、そっちの用事は終わったのか?」
「うん。まだ色々 試したいことはあるけど、今日のところは」
答えながら【澱月】に礼を言って術式を解くと、伏黒は「そうか」と小さく呟いた。
「なら、虎杖に体術 見てもらえよ。式神使いは術式の特性上 狙われやすい。鍛えといた方がいいぞ」
「え⁉」
「おー、そういえば、五条先生にも言われたな。『式神使いはまず術者本人を狙え』って」
虎杖、空気を読んでくれ。これは純粋に稽古を勧めているわけではない。ある種の嫌がらせだ。顔を見れば分かる。
詞織は自分以外の男にべったりで、伏黒自身は虎杖にコテンパンにされたのだ。不機嫌MAXな顔をしている。
「強くなりたいんだもんな?」
「そうだけど、今日は……」
「もう逃げない、だったろ?」
「逃げてるわけじゃ……」
いえ、逃げています。すみません。
逃げ道を塞いでくる伏黒に順平は視線を彷徨わせた。
「ほら、虎杖くんも疲れてるだろうし……」
「俺は疲れてないぞ」
だから! 空気を読めって!
強くなりたいし、体術を学びたい気持ちもある!
伏黒の言っていることが、ただの嫌がらせじゃないことも分かっている。
だが、この流れでやるのは嫌だ。何か違う。