第34章 皆と過ごすディヴェルティメントな日々
「これを経験しているのとしていないのとでは、呪力への理解の深さが違う」
わたしもまだ経験したことがない、と彼女は小さく付け足した。
「でも、ジュンペーは経験した。強くなれるよ、ジュンペーは」
「そっ、か……」
順平はパンッパンッと頬を叩き、【澱月】を見る。
「よし、【澱月】! 続けて」
【澱月】が触手を持ち上げ、順平の腕に押しつけた。ビリビリッと腕が痛みに痺れ、ジクジクと腫れ上がる。
それを治してもらい、また傷つけて……何度も何度も繰り返し、やがて爛れた自分の腕を見て、順平は声を上げた。
「でき、た……っ!」
やった! と【澱月】の滑らかで柔らかな身体を抱きしめるが――めちゃくちゃ痛い。泣きそう。
「あとは、もう少し威力とか効果を上乗せできるように練習して……」
「それは軽めの任務を入れてもらって、呪霊相手に試せばいい。これ以上は危険。今のわたしじゃ治せない。ショーコさんに頼むなら別だけど」
腕の傷を治しながら、詞織がアドバイスしてくれる。なるほど、その手があったか。
詞織ならいいというわけではないが、家入に頼むのは気が引ける。今度 五条に相談して任務を入れてもらおう。
ダンッと強い音がして視線を向けると、虎杖が伏黒を組み伏せているところだった。
「はい、また俺の勝ちな」
いやいや。虎杖に体術で勝てる人なんていないでしょ。
なにせ体術だけなら、京都校の東堂より強いと伏黒が断言したくらいなのだから。