第33章 アモローソに募らせた再会【そういうこと】
「じゃあさ、虎杖はクラスの女子で誰が好き?」
中学の頃に聞いた、子どもじみた幼稚な会話。
自分には縁のない、別世界の話。
友人の問いかけに、虎杖は漫画を読みながら、「別に誰も」とそっけなく答えた。
そんな彼らの会話を、優子はたまたま聞いてしまったのだ。
「強いて! 強いて!」
しつこく食い下がってくる友人に、虎杖も「うーん……?」と唸りながら漫画から顔を上げる。
「……強いて言うなら、小沢」
え、と思わず声が出そうだった。
同じクラスで、必要があれば話すこともあったが、特別 仲がよかったわけでもなければ、よく話す間柄でもない。
それなのに、なぜ自分の名前が……。
「えー……いやいや、デブじゃん」
うっ、とその言葉は確かに胸を抉った。
何も言い返せない。
間違いなくその通りだと、自分でも肯定するしかない現実。
けれど、「そう?」と、虎杖はあっけらかんと返した。
「でもさ、アイツ、食い方とか字とか、色々すげー綺麗なんだよ」
虎杖はいつでもクラスの中心で、誰とでも仲が良くて、笑顔がキラキラと輝いていた。
「っていうか、背と尻のデカい女子が好きって言ってたじゃん」
「それはそれ!」
優子は静かにその場を立ち去った。
泣きそうだった。
胸が震えるくらい嬉しかった。
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