第32章 朝焼けと夕焼けのラメンタービレ【共犯/そういうこと】
二名以上の一級呪術師から推挙された者は、現役の一級、または一級相当の術師と共に幾度か任務をこなす。
そこで適正ありと判断されれば準一級へと昇級し、続いて単独での一級任務へ指名される。
その任務の結果 如何によって、正式に一級術師に成るか否かが決まる。
カコーンッと卓球のボールが跳ねる。
「吉野クンの三級推薦は通るだろうね。詞織ちゃんたちと一緒だったとはいえ、特級相手に生き残れた運は評価されるべきだ」
「運じゃないよ。詞織たちの話では、しっかり活躍している。経験さえ積めば、二級もそう遠くないだろう」
星也の言葉に、「そ?」と垂水は肩を竦めた。
「でもさぁ、これって本人たちにはまだ話してないよね?」
カコーンッ、カコーンッと卓球のボールは台の上で跳ねる。
「真希ちゃんって……【天与呪縛】で呪力がないっていう体術オバケの子か。野薔薇ちゃん……は、【芻霊呪法】の茶髪の子ね。二人ともタイプじゃないんだよな。それから、東堂がご執心の【宿儺の器】の虎杖クンに、ボクの大好きな詞織ちゃん、さらに悲しき彼氏の伏黒クン。あと……パンダ? パンダが術師やってるとかすごい時代だよね。でさ、この六人が推薦を受けるとは限らなくない?」
バコーンッと星也のスマッシュが決まり、東堂の横をボールがすり抜けた。
垂水が数字をめくり、星也に得点を入れる。
それを確認してニヤリと笑い、東堂は新しいボールを手の中で弄んだ。
「虎杖(ブラザー)は絶対に推薦を受ける。宿儺が協力的でない以上、“指”との遭遇率を上げるため、任務の危険度も上げねばならんからな」
ここでようやく、自分はなぜこんなところで卓球をやっているのかと星也は疑問を抱く。
おかしい。ただ、五条の頼みで詞織や伏黒たちを東堂と共に推薦しに来ただけのはずだ。
カコーンッと東堂がサーブを決め、ラリーが始まる。