第32章 朝焼けと夕焼けのラメンタービレ【共犯/そういうこと】
――八十八橋の一件から二日後。
「いやぁ~、“指”の呪霊だけじゃなくってさ、遺体を調べてビックリ! なんと、盗まれてた【呪胎九相図(じゅたいくそうず)】の受肉体だったの。特級相当を各個撃破! それも、新人の順平も一緒に。今年の一年は豊作だね。僕の指導者としての腕がいいのかな?」
五条は長い足を組み、コーヒーを飲みながら電話をかけていた。
ぼちゃぼちゃと音を立て、大量の角砂糖がコーヒーに沈んでいく。
『オフの日にアンタと長話したくないのよね。“飲み会の幹事の件”でしょ?』
電話の相手――歌姫がため息を吐いた。
「どう? “目星はついた”?」
飲み会の幹事――高専に紛れている内通者の調査の話だ。
どこで会話を聞かれているか分からないため、面倒ではあるが当たり障りない会話に偽装して続ける。
『“全然”。私も含め、皆 忙しいの。どうする? “学生にも”声かけてみる?』
「僕、下戸だから。ノンアルでも構わないよ。“引き続き”、声かけよろしく」
通話を切り、五条はスマートフォンを手の中で弄ぶ。
通者が学生ってのは考えたくないが……。
五条は再び電話を掛ける。
「もしもし、星也。元気? 確か、今 京都近辺だよね? 任務終わった?」
『その感じだと、また厄介ごとですか?』
「まぁまぁ。まずは話を聞いてよ。厄介ごとっていうか……」
―― 一つ、頼みたいことがあるんだけど。
ニヤリと笑う五条に、星也が電話の向こうでため息を一つ吐いた。
* * *