• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第32章 朝焼けと夕焼けのラメンタービレ【共犯/そういうこと】


 呪術高専 東京校――夕日の差し込む廊下に、『ケヒケヒッ』と耳障りな嘲笑が響いていた。

『オマエのせいだ。オマエが俺を取り込んだ。目覚めたんだよ。切り分けた俺の魂たちが』

 虎杖の頬に口を出現させ、宿儺は嗤う。

『大勢の、ケヒッヒヒッ! 人間を助けるか。小僧! オマエがいるから! 人が死ぬんだよッ!』

 黙って聞いていた虎杖は、不意に足を止めた。

「おい。それ、伏黒と詞織に言うなよ」


 ――「自分が助けた人間が将来 人を殺したらどうする?」


 少年院で、伏黒が言っていた言葉。

 五条が助けてくれたのは、虎杖の存在が有用だと判断したからだと聞かされている。

 それとは別に、伏黒と詞織が口添えしてくれたとも。

 自分が【宿儺の指】を食べたせいで、今回の事件は起こった。

 “指”を食べたことを後悔したことはない……というのは、嘘だ。

 それでも、あのときはそれが最善で、同じことが起こったなら、自分はまた“指”を食べて二人を助けようとするだろう。

 けれど、もし自分が“指”を食べたことが原因で今回の事件が起こって、今後もそれが増え続けていくと知ったら……伏黒も詞織も、自分を責めるに違いない。

 自分で選んでやったことだ。その責任は背負う。
 あの二人は関係ない。

 だから――……。

「言うなよ」

 低い声音で虎杖は宿儺を黙らせ、廊下を歩いた。

* * *

/ 859ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp