第32章 朝焼けと夕焼けのラメンタービレ【共犯/そういうこと】
「でも、一番元気そうなオマエに渡す。足も速いし、何かあっても逃げ切れるだろ」
預けるだけで、食べていいと言っているわけではない。
「食うなよ」と何度も念を押し、伏黒が虎杖の手に指を置――……。
グパッと虎杖の手のひらに口が現れた。
――パクッ、ゴクンッ
「「食うなっつったろ‼」」
「「食べちゃダメって言ったでしょ‼︎」」
反射的に順平も声を上げる。
手のひらに口が現れるという異様な光景すら吹っ飛んだ。
「え、俺ェ⁉」と戸惑う虎杖は、自分の手のひらを見つめ、眉を寄せる。
「コイツ……マジで! 今回もロクに働かねぇし!」
グーパーと手を開いて閉じてを繰り返し、虎杖は深いため息を吐いた。
「なんかさぁ、『宿儺が力を取り戻すために指の在り処を教えてくれる』って、五条先生が言ってたんだけど……コイツ、全然 何も教えねぇし。ここに指があったのも分かんなかったし……もしかして、五条先生って適当?」
まぁ……五条先生だから。
つき合いは虎杖たちほど長くないが、なんとなくそんな気はしている。
「クラァッ‼ オマエらぁ‼」
早朝の八十八橋に怒号が響き渡った。
橋の上には、新田が怒りの形相でこちらを見下ろしている。