第32章 朝焼けと夕焼けのラメンタービレ【共犯/そういうこと】
「これ……が、【宿儺の指】……!」
ドクンッと心臓が跳ねる。
見間違うはずはない。
母が死んだとき、自宅にあった。
「どした、順平?」
「か、母さんが死んだとき……これ、家に……!」
詞織はなんと言っていた?
――「取り込めば呪力のブースター、存在するだけで呪霊を引き寄せる最悪の呪物」
【宿儺の指】に引き寄せられた呪霊が母を?
だが、結局 【宿儺の指】がどうやって持ち込まれたのかは不明。
自分に持ち込んだ記憶はないし、母が持っていたとも考えにくい。
原因が分かっても、過程が分からない。
「そうか……これが、順平の母さんを……ゴメン」
「大丈夫。虎杖くんは悪くないよ。僕こそゴメン、取り乱して」
ギュッと拳を握りしめ、気持ちをやり過ごす。
「とりあえず、新田さんに連絡しよう。応急で封印してもらわねぇと。呪霊が寄る」
「確かにそうだけど……メグは大丈夫だったの? 寝ちゃってて」
「大丈夫だった」
そこへ、虎杖が名案を閃いた。
「俺、食べようか?」
「残飯じゃねーんだよ」
「よくそれ思いつくね」
本当に食べるんだ、これ。
食べ物と思っているわけではないだろうけど、食べようと思う発想が理解できない。
「ユージ。ユージがどれくらいまで取り込んでも大丈夫か分かってないの。むやみに食べようとしちゃ、ダメ」
そうか。指は呪力のブースター。
なら、指を食べればその分、虎杖の中の宿儺に力が戻るということ。
今は大丈夫でも、いつか虎杖が完全に乗っ取られてしまうこともあり得るのか。