第32章 朝焼けと夕焼けのラメンタービレ【共犯/そういうこと】
――八十八橋の下。
「め、メグッ⁉」
倒れた伏黒に、詞織が真っ先に血相を変えて駆け寄った。
「メグ? メグ……!」
何度も呼びかける詞織に、順平は虎杖や釘崎と一緒になってゴクリと息を呑む。
「「「ふっ……伏黒(くん)?」」」
やがて、伏黒の瞼がピクリと動き、ムクリと身を起こした。
「おっ、戻ったか。よかった、無事で」
「び、ビビッたーっ!」
「よかったぁ! 死んじゃってるのかと思ったー!」
ヨカッターッ‼ と順平は虎杖とハイタッチする。
「声量 落としてくれ……頭痛い……」
詞織に寄りかかり、伏黒が頭を抱えた。
「メグ、ケガしてる。ジッとしてて――【君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな】」
淡い慈愛の光が伏黒を包み込む。ゆっくりと光が引いた頃には、伏黒の細かな傷は消え、大きな傷も血が止まり、薄くなった。
ちなみに、虎杖と釘崎、壊相に襲われたトラックの二人も、詞織が【反転術式】で治してくれた。
だが、まだ未熟で完全に治療できてはいないため、大きな傷は高専に帰って治療してもらうことになっている。
「サンキュー、詞織」
「ん。メグも無事でよかった。心配した」
「ごめん」
甘い空気を出す二人に、釘崎はスパーンッと伏黒の頭を叩いた。
「【宿儺の指】持って寝こけるなよ。危ねぇな」
「なんで指のこと知ってんだよ」
さっきの変態兄呪霊がポロッと口を滑らせたからなのだが、話すと長くなりそうなので、詳しいことは黙っておこう。
不意に伏黒の手の中のものを見て、順平は顔を青ざめさせた。