第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「そうだね。へこんでる場合じゃない。あの人は呪いの初心者だから、わたしがしっかり守ってあげないと」
虎杖はこれから、呪術高専への入学が決まっている。宿儺の指を探すためと、監視の名目だ。
「それに、あんまり泣いてたら、年下のメグに示しがつかないし」
「一週間な」
「一週間もわたしの方が年上」
軽口が叩けるようになった詞織に安心し、「はいはい」と苦笑しながら、部屋のドアを開ける。
すると、不意に詞織が治療室の出入口付近に設置された洗面台の鏡に視線を向け、頬のガーゼに触れた。
「どうした?」
「別に……傷、結構ヒドイのかなって」
もしかして、顔の傷を気にしているのだろうか?
いや、顔だけじゃなく、身体の傷だって、女性ならば気になるだろう。
いくら生傷が絶えない職業とはいえ、仕方がないと割り切れるものではないのかもしれない。
「気にすることねぇだろ。傷が残って嫁の貰い手がねぇんなら、俺が貰ってやる」
伏黒の言葉に、詞織が目を丸くした。
しまった。少し慰めの言葉をかけてやるつもりが、うっかり本音が出てしまった。
「メグが……貰ってくれるの?」
「あ、あぁ……」
ジッと見つめてくる詞織の夜色の瞳に気恥ずかしさを感じ、伏黒は視線を逸らす。
恥ずかしいことを言った自覚はあるので、あまりこちらを見ないでくれないだろうか。
照れを誤魔化すように首の後ろを掻くと、詞織は少し考える仕草をして口を開いた。