第31章 もっと強くフェローチェに【起首雷同】
「あぁぁぁあぁぁぁっ⁉︎」
吹き飛ばされたはずの壊相の腕は、赤黒い色を伴って復活している。
血を固めて腕の形を作っており、『分解』の特性を持った壊相の血液によって、助手席の男の皮膚は爛れ、息も絶え絶えである。
『追うなよ、呪術師』
四人とも――特に血塗にトドメをさした男と女は、傷を癒し、確実に殺す。
すまん、血塗……! 弔ってやれなくて。
だが、必ず私が仇を取る!
そこで壊相は、追いかけてくるのが虎杖だけで、釘崎がいないことに気づく。
『……釘の女は何をしている?』
「釘崎‼」
わずかに背後を振り返って呼びかける虎杖に、壊相の背筋に悪寒が走った。
* * *
「神ノ原さん……僕たちも加勢に……」
目の前の現象――祓ったはずの呪霊が消滅しない事実に動揺しながらも、順平はどうにか無理やり気持ちを宥めた。
「大丈夫。野薔薇なら……」
そこへ、「釘崎!」と虎杖の声と同時に、釘崎が吹き飛ばされた壊相の腕に藁人形を投げつける。
「急かすな‼」
――【芻霊呪法――共鳴り】‼
* * *
壊相の胸を鋭い五寸釘が貫く。
黒閃発動直後の渾身の【共鳴り】。
『クソッ……がぁ‼』
あの女の術式は、呪詛返しではなかったのか⁉︎
ぐらりと傾ぎ、壊相がトラックの荷台から落ちた。虎杖は素早く駆け、拳を構える。
――弟の死に涙を流す壊相の顔が頭を過ぎった。
「ごめん」
小さく呟き、虎杖の拳が壊相の腹を貫く。
崩れ落ちる身体に、虎杖は「いってぇ……」と己の拳を見つめ、沈黙した。
* * *