第31章 もっと強くフェローチェに【起首雷同】
『オ、マ、エ、ら――ッ⁉︎ よくも、兄者をォォォ――ッ‼︎』
『血塗ゥゥゥッ!』
兄の腕や脇腹が吹き飛ばされていることに、血塗が逆上し、虎杖と釘崎に襲いかかる。
動きは単調。頭に血が昇っていて隙だらけ。
祓える――ッ!
「――【澱月】‼︎」
上空から月に照らされ、滑らかなクラゲが出現する。その背後から、詞織の術式を使い、順平も空から現れた。
伸ばされた【澱月】の触手が血塗を貫く。
『なんダ……カラダが、動かな……⁉︎』
「順平! 無事だったか!」
「【かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを】」
順平の毒で麻痺して動けなくなった血塗へ、淡々とした声音が響く。燃え盛る炎が血塗を呑み込んだ。炎は煌々と赤く爆ぜながら、血塗が絶命した。
「心配しなくても、すぐに兄貴も送ってやるわ」
血塗の亡骸に言い放ち、釘崎は壊相に向けて金槌を構える。
『血塗……』
――『俺たちは三人で一つだ』
ごめん、兄さん。
私がついていながら……。
壊相が涙を流す。
慈愛の涙――想定外の感情の振れ幅に虎杖の追撃の手が止まる。
「なんで、消えないの……?」
「まさか、呪霊じゃない……? そんなこと……」
血塗の亡骸を確認にきた詞織と順平の戸惑った声に、釘崎の意識も逸れた。
突然、キキキ…ブォンッと一台のトラックがトンネルを潜り抜けて走っていく。
「危ねぇなぁ‼ おん?」
トラックの助手席の男が窓から身を乗り出すと、その胸倉を壊相が掴んだ。壊相はそのまま男を連れ出し、トラックの荷台へと飛び乗る。
『スピードを上げろ。ブレーキを踏めば殺す。オマエも、コイツも』
分かったな、と指示を出せば、運転手は恐怖から何も言えず、ただ何度も頷いた。
虎杖がトラックを追うべく駆け出す。