第31章 もっと強くフェローチェに【起首雷同】
『ガッ――⁉︎』
虎杖がふらつく壊相の前に立ち、釘崎が五寸釘を見せつけながらこちらへ来た。
ザッと釘崎は術式を受けている花の刻まれた腕に釘を刺す。
――【共鳴り】‼
『グッ、アァァ――ッ⁉︎』
虎杖と釘崎から【朽】の痣が消えた。
【共鳴り】のダメージで、術式を継続できなくなったのだ。
『クッ、ソがアァァアァァ――ッ‼︎』
力を振り絞り、【翅王】を発動する。
壊相の翅が大きくはためかせた。
――術式が解け晴れた痛みで、より深く釘崎の意識は研ぎ澄まされていく。
その先で爆ぜる1/1000000の火花。
【翅王】から血の矢が放たれるより先に眼前の敵を仕留める。
“誠心”――虎杖 悠仁の本領。
禪院 真希を凌ぐ身体能力、格闘センス。
そこに与えられた呪いの力。
彼は黒い火花に愛されている。
虎杖は呪力を纏わせた拳を、釘崎は金槌を振りかぶる。
――【黒閃】
壊相の左腕と右の脇腹が吹き飛んだ。
壊相は混乱のど真ん中にいた。
なんだ、今の黒い光は⁉︎
おかしい。
自分は確かに、確実に呪力で肉体を強化した。
だが、気づけば肩も、脇腹も飛ばされていた。
『あっ、兄者ァアアアァッ‼』
弟の呼び声に振り返る。血塗がガードレールを伝い、ここまでやってきていた。
好機、と思ったのも束の間。弟は満身創痍で傷だらけだ。
「順平……!」
「詞織は⁉︎」
血塗の登場に、虎杖と釘崎を不安が襲う。
花の刻印に蝕まれる術式が、詞織と順平にも発動したことは、壊相から明かされていた。