第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「……傷、ヒドイ? 大丈夫?」
「別に。これくらい、いつものことだろ」
学ランを着込む伏黒に、詞織は泣きそうな表情を見せた。
現在、二人は呪術界の息がかかった病院で、治療を受け終えたところだ。
額に包帯、頬にはガーゼ、他にも手足や身体にもガーゼに包帯と手当してもらい、それなりに重傷である。
それは詞織も同じで、目に見える部分だけでも、伏黒と同じように額や頬に治療の痕跡が見られた。
小さく しゃくり上げる声が耳に届く。
見上げれば、大粒の涙で夜色の瞳を潤ませる詞織がいた。
「ごめん、なさい……わたしのせいだよね……あのとき、わたしがすぐに動けなかったから……」
あのとき……天井から二級呪霊が襲ってきたときのことだと分かった。
だが、うまく立ち回れなかったのは自分の未熟さのせいだ。詞織だけが悪いわけじゃない。
「メグが大ケガしたのも、わたしのせい……あの人が死刑になっちゃうのも……全部、全部……!」
「まだ死刑だって決まったわけじゃ……」
「おんなじようなものだよ……!」
珍しく感情的な詞織に、伏黒はグッと言葉を呑んだ。
虎杖 悠仁の処遇について、五条からすでに説明を受けていた。
死刑は確定――だが、執行猶予がついた、と。
両面宿儺の指は、破壊することができない強力な呪い。
そんな呪物を取り込んだ虎杖を、呪術界の上層部は処刑しろと騒ぎ立てた。虎杖が死ねば、中の【呪い】である宿儺も死ぬ。
そこで五条は、一つの提案をしたのだ。
宿儺に耐えうる器をみすみす殺してしまうのはもったいない。どうせ殺すのならば、全ての宿儺を取り込んでから殺すべきだ――と。