第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「痛いって」
そう言いつつも、伏黒は優しい笑みを浮かべながら、あやすように少女の頭をポンポンと撫でる。
あまり表情を変えない詞織が、感情が強く動かされたときに見せる笑顔や驚いた顔、泣いた顔が、伏黒は好きだった。
きっとそれは、この世界で一番、自分が間近で見てきた詞織の一面。
誰かのために一生懸命で、身体を張って、命を懸けて……たくさん傷ついても、諦めずに立ち向かおうとする。
一度決めると梃子でも動かない頑固者のくせに、時折り心が弱って挫けそうになる。
夜色の瞳に真っ直ぐ見つめられると、何でも叶えてやりたくなってしまうのだ。
神ノ原 詞織という一人の少女は、初めて会って、言葉を交わした瞬間から――伏黒の心を完全に占領していた……。
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