第30章 アルティソナンテに膨らむ想い【起首雷同】
いつまで逃げ腰なんだ!
母を殺した呪詛師を探すんだろ⁉︎
こんなところで逃げてどうする⁉︎
虎杖も釘崎も戦っている!
伏黒も戦っている!
詞織も戦っている!
それなのに、自分だけ逃げるのか⁉︎
全部 終わって、「無事でよかったね」と笑えるのか⁉︎
自分は逃げたくせに……!
逃げない、逃げたくないって言ったのはどこの誰だよ⁉︎
痛い。
苦しい。
こんなのイヤだ。
――でも!
「こんな痛み……母さんが殺されたときより、ずっとマシだ……!」
ふらりと立ち上がった。目元に溜まった涙を乱暴に拭い、ギュッと痛いくらいに血が滲むほど拳を握る。
「【澱月】‼︎」
叫ぶように、怒鳴るように呼ぶと、背後からズルルッと音を立てて現れた。
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はぁ、はぁ、と荒い呼吸を繰り返しながら、順平は稽古部屋の床に大の字で転がっていた。あちこち打ち身だらけで、全身が痛い。
「【君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな】」
ポゥ…と光が溢れ、痛みが引いていく。
「ありがとう、神ノ原さん」
「別に。【反転術式】の練習になるし、いくらでもケガしてくれていい」
基礎は教えたから、あとは数をこなせと言われているらしい。
まぁ、こちらとしては、痛いからケガなどしたくないのだが。