第30章 アルティソナンテに膨らむ想い【起首雷同】
「う、あ、あぁぁあぁぁ――――ッ⁉︎」
激痛に悶え、順平は膝を折り、身体を丸めた。
痛い。
痛い。
痛い。
なんだ、これは。
こんな痛み、感じたことがない。
詞織を見れば、歯を食いしばり、ふらふらとしながらも立っている。
これが、呪術師の戦い。
この激痛が、日常の世界。
死と隣り合わせの世界。
甘く見ていたわけではない。
それでも、想像を絶する。
『見つけたァ……』
青い身体の呪霊――血塗が薄暗い森の中から現れた。
『殺していいよなァ……兄者も楽しんでるしィ……』
ニタァッと血塗が笑ったような気がした。
――怖い!
死ぬ。
このままじゃ殺される。
相手の強さなんて、見ただけでは分からない。
でも、【澱月】よりずっと強い! 敵わない!
逃げなきゃ……!
「ジュンペー」
詞織に名前を呼ばれ、そちらを振り向く。
「逃げていい。初任務で戦うには、コイツは強すぎる。わたしが相手をするから、その間に逃げて」
気づいた。
気づいて、しまった。
詞織の足は微かに震えている。手も……澄んだ夜色の瞳にも微かに焦りが見て取れる。
怖いのも、死にたくないのも、詞織だって同じはずなのに。
「神ノ原さんは……」
「わたしのことはいい。どうせ、どっちかが残らなきゃ、逃げきれないでしょ。わたしがやる」
そうだ。逃げよう。
詞織は二級で自分より強いし、場数も踏んでいる。危なくなったら、逃げることだってできるはずだ。
――違う! そうじゃない!