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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第30章 アルティソナンテに膨らむ想い【起首雷同】


「ジュンペー、おぶって! ユージはまだいけるでしょ! 野薔薇をお願い!」

「この状況で⁉︎」

「オッケーッ!」

 撃ち出された血液の一つが釘崎の頭を掠める――ジュッと音を立てたかと思うと、溶かしきるより早く、虎杖が釘崎の身体を抱えた。

 順平も言われた通り、詞織を背中におぶる。


「【風はやみ 雲のひとむら 峰こえて 山みえそむる 夕立のあと】」


 しめった雨上がりのような風の匂いがした。
 次の瞬間には、順平の身体ごとふわりと浮き、ビュンッと駆けていく。

「うわぁッ⁉︎」

「ジュンペー、ちゃんとおぶって!」

「これ、大丈夫⁉︎」

「大丈夫。ジュンペーに発動してるし」

「そうじゃなくて! 伏黒くんに殺されないよね⁉︎」

「何言ってるか分かんないんだけど」

 そんなやり取りをしている横では、釘崎を抱えた虎杖が弾丸のようなスピードで森を駆けていた。

「え……ねぇ、ちょっと気になるんだけど、虎杖くんって人間のカテゴリでいいの?」

「一応、生物学上は。【宿儺の指】を食べる前から、人間のレベル超えてる」

 やがて、虎杖が「なぁ」とこちらに話しかけてくる。

「これ、二手に別れた方がよくね?」

「確かに、二人が逃げ切れれば大勢も立て直せるしね」

「賛成」

「分かった。じゃあ、二人とも気をつけて!」

 虎杖の提案に、釘崎、詞織、順平は頷いた。

「オマエら、死ぬなよ!」

 虎杖は右、詞織も左方向へ風を誘導し、順平ごと身体を運ぶ。

 やがて、血の矢が追いかけてこないことに気づき、詞織は術式を解いた。

「はぁ、はぁ……」

「攻撃が止んだ。ユージと野薔薇の方に行ったみたい」

「そっか……二人も、無事だといいけど……はぁ……」

 順平が肩を大きく動かし、吸って吐いて呼吸を整える。

 そのとき、ビチャッと生暖かい何かが放たれ、詞織と順平を赤く染めた。

* * *

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