第29章 追憶のバラッド【起首雷同】
「ちょっと、津美紀⁉︎ 恵くん、いちごオーレかぶってるじゃない⁉︎ なにしたの、アンタ!」
呼びかけて来た女子生徒に、津美紀は「なんでもない」と簡素に答え、こちらに背を向けて去って行く。
津美紀の友人である彼女の顔と名前は知っており、彼女は「恵くんに詞織ちゃん、またね♡」と投げキッスをして津美紀の後を追った。
話は終わったのだろう。
こちらに背を向けた津美紀を振り返り、その小さな背中を睨みつける。
「ねー、肝試しの件、考えてくれた?」
「行きたくないけど、心配だからついてくよ」
やがて、その場を後にする伏黒と津美紀を戸惑った表情で見やり、詞織はこちらについて来た。
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――「私、明日 星也さんに告白する。ずっと考えてて……やっと決心がついたの。任務でしばらく出張なら、返事を聞く心の準備もできるでしょ」
なんの節目でもない、いつもの日常だった。
伏黒が詞織を好きだと津美紀が知っているように、津美紀が星也に想いを寄せていることも伏黒は気づいていた。
――「恵は詞織に告白しないの?」
大きなお世話だ、と話したその翌日……伏黒と詞織が中学三年に上がって間もなくのことだ。
――津美紀が呪われた。