第29章 追憶のバラッド【起首雷同】
「伏黒くん!」
「吉野、オマエも出ろ! 相手がなんなのか分かんねぇ以上、人数は多い方がいい‼︎」
本当にそうなのか。
自分がここに残る必要はないのか。
でも……。
――「姉さまが言ってた。心は熱く理想を追いかけて、頭はどこまでも冷静に現実を見極めてって」
任務が始まってすぐに詞織が言っていた。
理想――五人全員が生きて帰れること。
現実――正体不明の“何か”に襲われていること。この【八十八橋の呪い】に攻撃能力がないこと。
なら、自分が取るべき行動は――……。
「分かった。伏黒くんも、やばくなったら出てきて! 絶対 死なないで!」
伏黒は珍しく微かな笑みを浮かべると、小さく手を振り「さっさと行け」と追い払う仕草をする。それを見ながら、順平も領域の外へと出た。
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