第29章 追憶のバラッド【起首雷同】
「釘崎!」
「釘崎さん!」
順平は慌てて駆け寄り、手を伸ばすも、間に合わない。
「問題ないわ。アンタらはモグラを叩け」
順平の手は届くことなく、釘崎はトプンッと壁に吸い込まれてしまった。
え、なんだ、あの呪霊は。
目の前の呪霊とも、虎杖たちが戦っている呪霊でもない。
「クソッ!」と伏黒が悪態を吐く。
「野薔薇⁉︎」
「釘崎、どこ行った⁉︎」
詞織と虎杖の意識が釘崎の呑み込まれた壁に逸れると、呪霊――血塗も『おほっ』と声を上げてそちらを見た。
『なんだぁ? 兄者かぁ? 俺もっ』
血塗がこちらへ駆け出して来る。攻撃されるかもしれないと、【澱月】に反撃態勢をとらせるが、血塗は何をすることもなくそのまま壁に呑み込まれる。
「あぁ、逃げた⁉︎ 待て‼︎」
虎杖も壁を通り抜けて消えた。
「え……何がどうなって……」
「釘崎たちも呪霊も、領域の外に出たんだ!」
そこへ、詞織が「メグ!」と伏黒を呼ぶ。
「詞織、オマエも釘崎と虎杖を追え! 予想以上に面倒くせぇのとバッティングしてるかもしんねぇ! 逆にコッチは想定よりずっと楽だ! 一人でなんとかなる! 釘崎優先! 追え‼︎」
「分かった。メグも気をつけて」
詞織の決断は早かった。
案じる言葉をかけ、領域の外へと出て行く。