第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「な、何したの?」
「気絶させたの」
固い声音で尋ねる詞織に、五条は「重っ」と言って、虎杖を地面に下ろした。見た目の割に体重があるらしい。
あれだけの人間離れした身体能力を考えると、体重のほとんどは筋肉だろう。
「ふぅ……これで目覚めたとき、宿儺に身体を奪われてなかったら、彼には器の可能性がある」
さて、と続けて、五条は伏黒と詞織に視線を移す。
「ここでクエスチョン。彼をどうするべきかな?」
どうするべきか。
生かしてもいいのか、それとも殺すべきか。
「呪術規定に則れば……処刑しないといけない。でも……この人は、自分の先輩も、わたしたちも、皆 助けようとして両面宿儺の指を呑み込んだ。わたしたちが弱いから、助けようとしてくれたの。それなのに……殺すなんて、理不尽すぎる」
そういうの、キライ。
ギュッと、少女は震える小さな手のひらを握りしめた。
「……俺も……死なせたくありません」
詞織の言う通りだ。
隙なんて見せなければ、二級呪霊など簡単に祓うことができたはず。自分たちの甘さが今回の事態を招いたのだ。
その責任を、虎杖だけに背負わせたくない。
それに……誰かのために一生懸命になって、身体を張って、命を懸ける。
そんな善人は幸せになるべきだ。
こんな風に、理不尽に命を絶たれていいはずがない。
「二人ともさぁ、それって私情?」
茶化すように意地悪く尋ねてくる五条に、伏黒はキッパリと断言した。