第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「……どこ行くんだよ」
ムッとした様子の虎杖に、順平も心配そうな表情をしている。
「メグのところに行くだけ。行き先だって分かってるし……」
「八十八橋、でしょ?」
順平のもたらした答えに、詞織は軽く息を詰めた。
「なぁ……何があったんだ? 津美紀の姉ちゃん、本当に大丈夫だったのか?」
虎杖を見つめる。
嘘を吐くのも、隠し事も、伏黒ほど上手くはできない。
「……大丈夫……まだ、今のところは……」
けれど、いつ呪いが発動して呪霊に襲われるかは分からない。
津美紀を守るのも、呪霊を祓うのも、急ぐ必要がある。
「……伏黒の話って、俺たちが聞いてもいい? 無理にとは言わないけどさ」
「話を聞いたら……巻き込まれることになるのに?」
「巻き込めばいいじゃん」
「そうだよ。友だちなんだからさ」
何も、言えなかった。
もしも逆の立場だったら……頼ってもらえないのは、悲しい。
それに、これを断れば、「自分は友だちだなんて思っていない」と、そう言っているようで嫌だった。
嘘だ。
そんなもの、全て綺麗事で飾った建前だ。
ただ自分が弱くて、伏黒を助けに行くには力が足りなくて、虎杖たちの力を借りたいだけだ。
「……入って」
虎杖と順平を部屋に入れ、ベッドに座らせる。
「ちょっと、勝手に男子を部屋に入れてんじゃないわよ」
「野薔薇……ごめん、起こした?」
「起きてるわよ、ずっと。隣であんなにガタガタ震えられたら、寝ようにも寝られないじゃない」
「ご、ごめんなさい……」
謝ると、釘崎は「別に」と短く返し、身体を起こした。