第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「ちょ、ちょっと待ってよ。オマエらって……メグは?」
「俺は武田さんに挨拶して帰る」
「それなら、わたしも……」
自動車を降りようとする詞織を「いい」と止める。
「俺もすぐに戻るから。明け方まで起きてたろ。任務も流れたし、寝てた方がいい」
「わたしはずっと寝てた。それなら、挨拶はわたしがやるから、メグの方が……」
最後まで言わせず、伏黒は詞織のキスをし、言葉の続きを奪った。
もしかしたら、これが最後かもしれない。
詞織を一人にするのはイヤだが、巻き込んで死なせてしまうのはもっとイヤだ。
頬に手を添え、脳と網膜に焼きつけるように彼女の顔を見つめた。
「メグ……」
「行って下さい」
新田に声を掛ける。
「メグ⁉ ねぇ、なんで……っ!」
「大丈夫だ。挨拶が終わったら俺も帰るし」
ミニバンの扉を閉め、発進した自動車が見えなくなったのを確認し、伏黒は八十八橋の方角へ視線を向けた。
* * *