第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「あぁ、いたーっ! 良かったー! 伏黒さーん! 詞織さ……じゃなくて、神ノ原さーん!」
大きな声で名前を呼ばれ、伏黒はそちらへ視線を向けた。
そこにいたのは、自転車に二人で乗った、自分たちと年の変わらない少年と少女。運転しているのは、昨日 中学で会った不良少年だ。
「誰だっけ?」
「伏黒と詞織の後輩だろ」
「釘崎さん、昨日 散々 イジってたのに忘れたの?」
虎杖と順平に言われ、ようやく「あぁ」と釘崎も思い出せたようだ。
「八十八橋って言ってたから……本っ当 良かった」
運転していた男子生徒がホッとした顔をする。
そこで、ふと詞織が不良少年の後ろに乗っていた少女に視線を向けた。
「あれ……藤沼さん?」
首を傾げる虎杖、釘崎、順平に、伏黒は「同級生」と短く教える。
「久しぶり、神ノ原さん。伏黒くんも。よかった……覚えてくれてて」
「覚えてるに決まってる。クラスメイトだったし」
駆け寄って再会を喜び合う詞織と藤沼に、反射的にムッと妬いてしまうのは、もはや癖みたいなものかもしれない。
「あなた、もしかして藤沼さんの弟さんなの?」
「はい」
詞織に頷く少年の隣で、藤沼が虎杖たちにぺこりと頭を下げた。
「俺、昨日、姉ちゃんに伏黒さんと神ノ原さんの話したんですけど……」
「あの……森下さんって近所でお葬式やってて……その人と八十八橋のこと調べてるってこの子に聞いたから……何か関係あるかなって……」
軽く視線を向けると、新田は“しーっ”とジェスチャーをする。「【呪い】の話はするな」という指示だ。もちろん、言われるまでもない。