第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「関係って?」
「だから、森下さんが亡くなったことと橋が……」
伏黒が促すと、藤沼は顔を青くして俯く。
「関係ない。わたしたちはただ……」
「私、行ってるの。中二のときに、夜の八十八橋に……‼︎」
思わぬ告白に、釘崎が「げっ!」と顔を引きつらせた。
「あの……もしかして、最近 何か家で変なこととかないですか? 家族の中で自分だけ感じる奇妙なこととか……」
順平の言葉に心当たりがあるのか。藤沼はハッと息を詰める。
「……私の家、地方のアンテナショップやってるんですけど、私が帰るときだけお店の自動ドアが開きっぱなしなんです」
藤沼の父も母もたまたまと言うが、絶対に何かが“いる”。
怖くてどうしようもなくなっているところに、伏黒と詞織の話を聞き、八十八橋のこと思い出したのだそうだ。
「自動ドアの話はいつから?」
「ちょうど一週間前から、一日置きくらい……」
虎杖に藤沼が答える。
被害者は四人とも、異常発覚から亡くなるまで、最低でも二週間は空いている。まだ少し猶予がありそうだ。
「当時、八十八橋に一人で行ったわけじゃないわよね? 誰と行ったか覚えてる?」
釘崎の質問に不安を覚えたのか。藤沼は「やっぱり関係が……」とカタカタと震え出す。
「自動ドアとは関係があるかもしれないッス。でも、森下さんが亡くなったのは関係ないっスよ。私の大学の課題(レポート)を伏黒君や神ノ原さんたちに手伝ってもらってるんス。『心霊スポットにおける電磁波と電化製品への影響』。ゲロダルいっス‼」
それらしい理由をでっち上げた新田は、藤沼と視線を合わせ、「ダイジョーブ!」と安心させるように笑いかける。
「でも、色んな人の話を聞きたいから、一緒に行った人 教えてほしいっス」
新田の言葉に、藤沼はホッと安堵した表情をした。
だが、新田の言葉は嘘だ。自動ドアの件と森下たちが死んだことは密接に関わりがある。
それを「関係ない」と嘘を吐いたのだから、それを証明するためにも助けなくてはならない。