第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「どうだったッスか?」
「残穢も気配もまるで感じられませんでした」
残穢も感じられず、呪霊も現れない。
こうなると、こちらとしてはやれることがない。
「っスか……となるとハズレ。ふりだしっスかね」
「でも、時間かけるのはマズくねぇ?」
おにぎりの封を開けながら、虎杖が口を開いた。
「なんでよ」
「どうしてそう思うの、虎杖くん?」
「だって、有名な心霊スポットなんだろ? 呪われてる人はまだまだいるかも。しかも、今んところ、致死率100パーセント。これ以上、人死には勘弁だろ」
釘崎と順平の問いに、虎杖はおにぎりを頬張りながら続ける。
「確かに、ユージの言う通り」
「だな」
詞織と伏黒が同意を示すと、釘崎と順平もコクリと頷いた。
「そうだ。流行ってたのはバンジーっスよね。『飛び降りる』って行為が鍵なんじゃないっスか?」
「それはもう虎杖で試しました」
「えっ⁉ もしかして、あのビニール紐で跳んだんスか⁉」
伏黒が虎杖を指さすと、新田が驚愕した声を上げる。
「まぁ、そういう反応するよね……」
「わたしだって、ユージじゃない人が跳ぶっていうなら、さすがに心配する。メグとか、野薔薇とか、ジュンペーとか」
順平と詞織に、伏黒も「そりゃそうだろ」と内心で呆れた。
虎杖じゃなかったらビニール紐でバンジーなんてできないし、させない。
もしも詞織が跳ぶと言ったなら自分は全力で止めるし、なんなら代わりに跳ぶ。