第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
ビュンビュンと目の前で自動車が通り過ぎて行く。
伏黒の膝を枕にして、詞織はすやすやと寝息を立てていた。
長い髪を撫で、頬に触れ、時折 耳の輪郭のなぞり……寝顔を眺めているだけであっという間に時間は過ぎた。
その隣で、虎杖が大きな欠伸をする。
「ちょっと、呪霊の呪の字も出ないじゃない」
苛立たしげに舌打ちをする釘崎、さらにその向こうでは、順平がうつらうつらと船を漕いでいた。
「……五時か。これ以上 ここにいても無駄だな。新田さんに迎えにきてもらうか」
「んじゃ、電話かけるぞー」
虎杖に電話を任せ、伏黒は詞織の肩を叩く。
「詞織、起きろ。移動するぞ」
「ん……?」
詞織がうっすらと瞼を開き、伏黒の首へ腕を回してきた。「え」と思う間もなく顔が近づき、吐息が唇にかかる。
「……あれ……メグ、どうしたの?」
ようやく覚醒した詞織が目を瞬かせて離れた。寝ぼけていただけのようだ。
軽く虎杖たちを見て、三人の意識が逸れていることを確認した伏黒は、そのまま「ちゅっ」と啄むように彼女に口づけた。
「へっ……⁉︎」
驚きに目を丸くして顔を赤くする詞織の耳に唇を寄せる。
「期待させたオマエが悪い」
「な、何もしてないのに……」
「何もしてこねぇからだろ」
身を小さくする詞織の手を握り、新田を待つこと数分。
昨日と同じ配置でミニバンに乗り込み、一時間ほど仮眠をとって、近くのコンビニで朝食を摂ることとなった。
それぞれ、おにぎりやサンドイッチなど手軽に素早く食べられるものを買う。