第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「ユージ! どう? 何かいる?」
「なーんもっ‼︎」
橋の下から虎杖の声が響く。
「最初に聞くの、『大丈夫?』じゃないんだ……」
「虎杖だからな」
「虎杖だもの」
声を揃える伏黒と釘崎の簡潔な答えに、順平は驚きを通り越して感心する。
なんで橋から飛び降り、ビニール紐も切れたと言うのに無事なのか、とか。
声の様子からして怪我をしている様子もない、とか。
そんなこんなは全て、『虎杖だから』で済まされるのだ。
「虎杖、【鵺】を下ろしてやるから、一旦 上がってこい」
程なくして、【鵺】に掴まり、虎杖が橋の上まで戻ってきた。
「えっと……もしかして、無事だったりする?」
「ん? もしかしなくても無事だけど。あ、でも、着地ミスって手のひら擦りむいたんだよな」
あ、骨折とか捻挫ですらなく、擦り傷だけ。
しかも、手のひらを見る限り、絆創膏を貼るほどですらない微かな傷だ。なんで?
「ユージ、どう? 呪われた?」
「んー……分かんねぇ。時間差とかあんのかな」
「じゃ、しばらく待機ね」
虎杖の返答に、釘崎がドカッと橋に座り込む。それに倣い、順平たちも腰を下ろした。
「はぁ〜……待ってるだけも退屈ね。何か持って来ればよかったわ」
「新田さんに差し入れ頼む?」
「止めろ。いつ呪霊が現れるか分かんねぇぞ」
虎杖の提案を伏黒が却下する。
確かに彼の言う通りだし、お菓子を食べて緩みきった空気感の中ですぐに頭を切り替えられる自信もない。