第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「着いたっス」
浦見東中学で話を聞いたその足で、順平たちは例の橋にやって来た。
陽はだんだんと沈み始め、辺りは不気味な暗さを滲ませていく。
――鯉ノ口峡谷 八十八橋
「呪霊が確認でき次第、【帳】を下ろすっス」
コクリと五人が頷いたのを確認し、新田は去って行った。
「おーっし、いっちょ飛ぶか!」
近くのスーパーで買ったビニール紐を弄びながら、虎杖が橋の下を眺める。
「ほんとにやるの⁉︎ ビニール紐でバンジーなんて正気じゃないよ!」
けれど、焦っているのは自分だけで、順平以外は全員が淡々と作業をしていた。
「別にヘーキでしょ。ユージは素で四階に飛び込んでくるし」
「呪霊に飛び蹴り喰らわせるようなヤツだぞ」
「東堂と互角に戦(や)り合って意気投合するしね」
詞織、伏黒、釘崎に指をさされ、虎杖が照れたように頬をかく。だが、どれも人間業ではない。
いや、待てよ。
確か虎杖は【澱月】に刺されても無事で、その後に真人と激戦を繰り広げていた。やはり、人間ではないのか。
「よし、足に紐結んだ! 紐の先は手すりにつけた!」
柔軟体操で身体をほぐし、ピョンピョンッと軽く跳ね、手すりに足をかける。
「じゃあ、いってきま――――………」
最後の一音は橋の下に吸い込まれていった。勢いよくビニール紐が消費されていく。やがて、虎杖の体重と重力を支えきれず、ブチっと紐が切れた。
「――……うぉッ⁉︎」
「虎杖くん⁉︎」
順平は橋の下に声をかけるが、返事はない。
まさか、死んだんじゃ……そうでなくても、血を流して倒れているかもしれない。
どうしよう……と顔を青くさせていると、隣で詞織が橋の下を覗き込んだ。