第25章 アレグロに青空を駆け抜ける【呪術甲子園】
「えっと……たぶん催眠と麻痺、はあったかも」
刺されると皮膚が変色し、相手を動けなくすることはできたはずだ。
「それ以外だと……うーん……」
考え込む順平に、垂水はやれやれと肩をすくめる。
「まずは、自分の術式を知ることが先じゃない? できることとできないことが分からないと、戦術の方針も決められないでしょ。あらかじめ設定されている毒じゃない。"君の呪力で生成した毒"なわけでしょ? やりようはいくらでもありそうだけど」
「あ……ありがとうございます!」
頭を下げて礼を言うと、彼はひらひらと手を振る。そこへ、詞織も淡々とした声で「ありがとう」と礼を口にした。
「いいよ。キミの頼みならね」
頬に手を触れ、親指が彼女の唇をなぞる。
「おい、オマエ……!」
触れた親指をペロリと舐め、垂水は得意げな笑みを見せた。
「詞織ちゃんって、かなり鈍感だね。ほんとボク好み。泣いて従わせて、ボクを教え込んで、自分が誰のモノなのか分からせてみたいな」
「誰の? わたしはメグのだけど」
あっけらかんと答える詞織に、「分かってんのに何でこんなに無防備なんだ」と頭を抱え始める。
「ふぅん……なんか伏黒クンが可哀想になってきたな。伏黒クン、イヤになったら教えてよ。ボクならちゃんと躾けられるし」
「一生来ませんよ、そんな日は」
詞織の腰を引き寄せて伏黒が垂水を威嚇する。
その様子を見て一度 苦笑し、彼は「じゃ、バイバイ」と手を振って去って行った。
それを見送ると、詞織は伏黒の手を離れ、順平に呼びかける。