第25章 アレグロに青空を駆け抜ける【呪術甲子園】
「……なーんだ。ま、いいや。それで? 聞きたいことはボクの【クラゲ】について? 教えるのはいいけど、ボクにどんなメリットがあるの? デートでもしてくれる? それともキスしてくれる? なんだったら……一晩過ごしてみる?」
人差し指で詞織の顎をクィッと持ち上げ、視線を合わせる。
ほらほらほら!
そりゃあ、そうなるって!
「神ノ原さん、やっぱりいいよ! これ以上は僕、伏黒くんに怒られ……」
いや、怒られるだけですむのか?
もしかしたら殴られ……まさか、殺されるなんてことは……ない、よね……?
「ようは見返りがほしいってこと?」
「もちろん、自分の術式の一部を開示するわけだし……タダで、とはいかないよね」
そう、と詞織が頷く――と、彼女は人差し指と中指を揃えて唇に触れ、その指で垂水の唇に触れた。
「……え?」
「これじゃダメ?」
コテンッと首を傾げる詞織に、垂水の顔が一気に赤くなる。
「詞織ッ!」
血相を変えて、彼氏である伏黒の登場である。
あ、終わった。
「メグ、どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃねぇ! 何やってんだよ!」
「何を? 術式の話を聞くのに対価払ってた。こうして、うーん……間接キス? 直接 キスするのはイヤだし、ムリだし」
アウトでしょ。絶対ダメ……あ〜〜……伏黒が恐ろしい形相に……!
「うん、分かった分かった。詞織ちゃん、何聞きたいんだっけ? ボクの住所? 電話番号? スリーサイズ? 恋人が何人かいるけど、詞織ちゃんのためなら全員 別れるよ!」
「いらない。【クラゲ】の話を聞きたい。ジュンペーの【澱月】の参考に」
「吉野、の……?」
ギギギ…とこちらを見る伏黒が怖くて目を合わせられない。