第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「来る気なかったんだけどさ、さすがに特級呪物が行方不明となると上がうるさくてね。観光がてら馳せ参じたってわけ。いやー、二人ともボロボロだね。二年の皆に見せよーっと」
そう言いながら、五条は伏黒と詞織を写真に収める。
自分勝手な担任の行動に、伏黒はイラっとした。
「そうだ、新幹線の中で星也と星良に会ったんだ。二人とも心配していたし、この写真送って安心させてあげよう!」
なんて優しいんだろう! と自画自賛する五条だが、ボロボロな状態の妹の写真を見て安心できる兄姉などいない。
少なくとも、あの双子の姉弟を知っている伏黒には、写真を見て喜ぶ二人を想像することはできなかった。
「……で、見つかった?」
スマートフォンを操作して写真を送っているらしい五条に問われ、伏黒は黙る。
見つかったには見つかったのだが……。
詞織と視線が合い、示し合わせたわけでもないのに、二人は揃って顔を伏せた。
どう説明する? まさか――……。
何も言えないで黙り込む二人に、虎杖が「あのー」と挙手する。
「ごめん。俺、それ食べちゃった」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
沈黙。
沈黙。
「マジ?」
「「「マジ」」」
長い沈黙果てに呟いてみるものの、事態の大きさに深いため息が出た。
そんな彼を見た詞織が、労わるように小さな手を伸ばす。柔らかな手のひらが伏黒の黒髪を撫でた。
「……疲れたね、メグ」
……何、このカワイイ生き物。
というか、疲れているのは詞織とて同じだろう。
撫でて労わろうという発想もカワイイ。
もちろん、だらしない表情を見せるわけにもいかないので、照れ隠しに詞織の頭をガシガシと撫でてやる。