第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
一方で、五条はグッと顔を近づけ、黒い布で覆われた目で虎杖を観察していた。
「んー?」
「見えてんの?」
怪訝な表情をする虎杖をしげしげと"見る"。
"見られた"と気づくと襲い掛かってくる呪霊も多いため、呪術師の中には目隠しをしている者も少なくない。
しかし、五条が目隠しをしている理由は別にあるらしい。詳しくは知らないが、彼は"見え過ぎる"のだという。
個人的な見解としては、呪力の流れを視認できるのではないかと思っている。
やがて、五条は「ははっ」と小さく笑った。
「本当だ、混ざってるよ。ウケる」
ウケるって……この状況で笑っていられるのは、世界中を探してもこの男しかいないだろう。
「……どうなってるの?」
「さぁな。あの人の考えてることは、俺には分からん」
現状、見守るしかない状況の中で、五条が口を開く。
「身体に異常は?」
「特に……」
「宿儺と代われるかい?」
腕を動かして不調の確認をする虎杖に、彼は質問を重ねた。
「スクナ?」
「君が喰った【呪い】だよ」
「あぁ……うん。多分できるけど」
その回答を聞くや否や、五条は準備運動を始める。足や腕の筋肉を伸ばしたり縮めたりして身体を解し、「十秒」と呟いた。