第25章 アレグロに青空を駆け抜ける【呪術甲子園】
「約束してくれ、虎杖(ブラザー)。この打席で俺がホームランを打ったら、次回はオマエが、ピッ……」
メキッと東堂の横っ面(ツラ)にボールがめり込み、東堂はひっくり返った。真希がわざと暴投したのだ。
「とっ、東堂! しっかりしろ‼︎」
虎杖は慌てて東堂の大きな身体を抱き起こす。
「ナイスピッチー」
「ナイッピー」
「ナイッピー」
「ナイッピー」
真依、桃、加茂、垂水の掛け声に、三輪は苦笑するしかなかった。
「ナイッピー」
「真希さん、ナイッピー」
伏黒、釘崎たち東京校からも賞賛の声が上がる。
「東堂……っ、オマエ……!」
むちゃくちゃ嫌われてるな……。
虎杖は言葉も出なくなった。
そんなこんなで、試合はどんどん続く。
――五番《ショート》狗巻 棘
「おおっ、間に合った!」
「すっご!」
虎杖、順平が拍手すると、「狗巻先輩、足速いんだよ」と伏黒も小さく手を鳴らした。狗巻が「すじこ」とベンチに向かってVサインをする。
「棘くん、かっこいい……!」
ピシッと伏黒の拍手が止まった。
隣でキラキラと憧れに目を輝かせる詞織に、伏黒は眉を寄せ、あからさまに不機嫌な顔をする。
「真依! 三輪! 垂水! 盗塁あるわよ!」
歌姫がすかさず《ファースト》真依、《セカンド》三輪、《サード》垂水に指示を飛ばす。
――カーンッ!
次の打席で、虎杖がボールを打ち上げた。
「入ったな」
「おっし!」
真希が口角を上げ、虎杖もガッツポーズをとる。
桃が高く飛び上がりグローブを伸ばすが、ギリギリ先を掠めるだけで……そのまま場外ホームランとなった。
東京校 2 - 0 京都校
30年度交流会 勝者 東京校
こうして、姉妹校交流会は東京校の勝利で幕を閉じたのだった。
* * *